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shanghai / ラノベ部 RSSフィード

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2010/10/13(Wed)

石川あまね『シー・マスト・ダイ』(ガガガ文庫石川あまね『シー・マスト・ダイ』(ガガガ文庫) - shanghai / ラノベ部 を含むブックマーク はてなブックマーク - 石川あまね『シー・マスト・ダイ』(ガガガ文庫) - shanghai / ラノベ部

SFマガジンにレビューが載ってたのを読んで買ってみた。

当局機関が密かに超能力者を暗殺しようとする、というお約束のプロットなのだが、オープニングシーンが「授業中の教室に突然、銃器を持った暴漢が侵入してくる」という中二病ド真ん中のシチュエーションで吹いた。しかも主人公が「中学生男子なら誰でもこんな妄想はしたことがある」とか中二病に対して自己言及的。グラップラー刃牙において「男は一生に一度は地上最強を夢見る。(中略)これは誰でも見る」とか断言しちゃうのに近いノリである。

自衛隊内の予知能力部隊が予知した、「将来、数十億人の死の原因になる危険人物」が校内にいるが、どの生徒かまでは特定できない(もちろん標的の人物が予知を妨害しているため!)ので、予知された未来が変わるのが確認できるまで、力の強い能力者から殺そう、という、テロ事件を装った自衛隊超能力部隊の作戦。当初は、高レベルのテレパスであるヒロインが標的の有力候補だったが、無能力と思われていた主人公が実は……、みたいな、ハッキリ言って何の捻りもない単純な一段階どんでん返しで、展開は完全に読める。

超能力者が激増してその存在が明らかになった近未来で、日本は唯一、超能力者が法的に一般人と区別されない完全な自由を得ている国だったり、日本では大地震を契機に能力が覚醒した子供が多いので特定世代に能力者が集中している、とか、発現する能力はマンガや映画などのフィクションに影響されるので(まさに中二)能力から世代が推測できる、とかディテールの設定は面白いし、「予知された内容を知っている人間のみ、その未来を改変できる可能性がある」というルールもなかなかいい。でも後半それらを活かす能力バトル的な展開にはならず、ヒロイン視点で真相が明かされるミステリ的な流れになる。そしてそのハッタリのスケールのデカさこそ特筆すべきもので、『紫色のクオリア』などに近い。山本弘のいう「筋の通ったホラ話」とか、新城カズマの「スローペースで始まって、後半すごい加速で真相を明らかにしていく」といったSF観に通じるものがある。

オチを書いてしまうと、超能力の適性ほぼゼロと思われていた主人公の少年が、実は「全宇宙史的な規模の予知能力と、微弱なPK」の持ち主で、バタフライ効果の蝶にあたる極めて微小なPKによる干渉を行うことで、結果として自分に都合の悪い未来を改変する能力者だったことが判明。例えば幼少時に川で溺れるヒロインを助けるために飛び込んだ主人公は、まず自分も一緒に溺死する未来を予知し、その未来を改変するために「川の源流近くの一滴」をPKで操作することで以下の流れに影響を与え、結果として自分を河岸へ渡す流れを作って助かる、というエピソード。過去から未来へ渡る完全な予知情報が「ラプラスの魔」として振舞うことを可能にする、というすごいハッタリだった。

しかも主人公には「意識が二つ」あって、完全な無意識下でこの能力を使っている、というのだが、なんかブギーポップの『エンブリオ炎生』に出てきた「タイトロープ」みたいだなーと思った。あれは完全な能力である代わりに「他人のため」にしか発動しないという制約だったけど、それとの違いを考えると興味深い。原則として無意識で云々はあまり好きではないので、「完全な予知能力者である主人公」の人格をこそ書いてほしかったと思う。それだとまた違う話になっちゃうけど。

あと、イラストの絵柄があまりにも本編の雰囲気とかけ離れていると思った(笑。わりと挿画のイメージに引きずられるほうだけど、無意識にかほとんど絵を無視して読んでしまった。

 

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