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shanghai / ラノベ部 RSSフィード

2012/01/05(Thu)

田中ロミオ『灼熱の小早川さん』(ガガガ文庫田中ロミオ『灼熱の小早川さん』(ガガガ文庫) - shanghai / ラノベ部 を含むブックマーク はてなブックマーク - 田中ロミオ『灼熱の小早川さん』(ガガガ文庫) - shanghai / ラノベ部

普通の高校生であろうとする主人公が、ちょっと変わったヒロインのフォローをするうちにどんどん「変な人」サイドに押し出されていく、という話型は前作である『AURA』と同じだが、厨二病モチーフでヒロインをはじめエキセントリックな登場人物が大半を占めた前作とは対照的に、今作ではヒロインも含めラノベ的に過剰なキャラは控えめで、良い意味でラノベ的でない面がある、と評したい。

逆に、一般のラノベならほとんど描写すらされないであろう普通のクラスメート達に主人公が追い詰められていく展開には、「普通」なるものに対する作者田中ロミオの深い絶望が感じられる。クラスの協力が得られず二人で準備した学園祭の出し物が、本番だけエンジョイしに来たクラスのリア充どもに乗っ取られてしまう、しかも彼らに悪意は全くない、というくだりは涙なしには読めない。それでも主人公はヒロインと、おそらくは自分自身にも言い聞かせる。本来はクラスみんなの企画なのだから、これでいいのだ、と。

そんな主人公を田中ロミオは「いい人」として描いているのではない。「普通の人に対する諦め」を描いているのである。

普通のクラスと、普通になれない主人公との軋轢を描く本作は、本来のラノベ読者に届くべき物語であり、こういうラノベがほとんどないのは現状のラノベの歪みなのかもしれないなあと。少なくとも、まだほとんど書かれていないラノベの一つの形とはいえるのではないか。

ただ、全体として「初稿をそのまま出してしまった」ような、本来あと二、三度は改稿を経て完成形に仕上げるべき、その前の段階のものを読んでしまったような印象がある。使い切れていないいくつかのモチーフ(冒頭で主人公が幻視する炎の剣、ヒロインのブログ関連のあれこれ、いじめられて転校していくクラスメートを主人公がほとんど認識していない――のはわざと?など)がまとめ切れていないように見える要因だと思うが、これもラノベ的にわかりやすくまとめすぎていないだけ、と読むべきかなあ。

少なくとも、最後のクライマックスシーンが少し弱いので、そこから結末に至る流れはもう一工夫欲しかったとは思う。一応ハッピーエンドなのでなおさらである。