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shanghai / ラノベ部 RSSフィード

2015/02/17(Tue)

荻原規子RDG レッドデータガール』(角川スニーカー文庫、全6巻) 荻原規子『RDG レッドデータガール』(角川スニーカー文庫、全6巻) - shanghai / ラノベ部 を含むブックマーク はてなブックマーク - 荻原規子『RDG レッドデータガール』(角川スニーカー文庫、全6巻) - shanghai / ラノベ部

読み終わったのは一年も前で今さら感はあるが、やはり書いておくべき作品だろうと思って挙げる。

古き良き時代のラノベの美風を残した佳品。以下概ね絶賛である。

成り立ちからしてちょっと違う。本作の初出はカドカワ銀のさじで、これは未読だが児童書/ファンタジーという括りのレーベル。それから角川文庫に収録され、アニメ化に伴って角川スニーカー文庫版が刊行された。よくわからないレーベル(失礼)向けに書かれ、懐の広い角川文庫に収録され、これまた境界の曖昧な、ラノベの老舗レーベルともいえるスニーカー文庫にもなる。これは「ジャンル小説に収まり切らない作品が吹き溜まりのように集まった」ラノベの成立過程を個体発生的になぞっているかのようではないか。

内容は少女小説が一応のベースになっているといえるが、ファンタジーであり学園ラブコメでもあり超能力バトルもあり、伝奇SFでもある。周辺のサブジャンルの成果をごった煮的に取り込んだ、まさに古典的なラノベ作法といえよう。

現在の(最近のw)ラノベは、よりラノベに近い分野への参照――たとえば「魔王と勇者」だとか「脳内選択肢」だとか要するにTVゲーム文化などの解釈に趣向を凝らすものが主流で、それはそれで面白いのだが正直広がりに乏しいとも感じる。そこでもう一度ラノベの原点に回帰して、伝統的・古典的なジャンル小説を混淆して分類不能の豊穣さを獲得し直した本作の登場である。

無論、作者はそんなことを意識して書いているわけではなく、

どうやら私は、私の中でのファンタジーの概念を、「神話・歴史に基づく過去の文化遺産に足をつっこみながらも、既存の制約に縛られず、個人の空想の自由な羽ばたきを許されるもの」と、とらえているようです。

レッドデータガール・シリーズで扱った修験道も、陰陽道も、忍法もそのつもりです。

と、あくまで本人的にはファンタジーの範疇で書いているとのこと。

少女小説的な部分はジュブナイルとして書こうとして自然にそうなったのだろうけど、紀伊山中の神社で生まれ育ったためどこか浮世離れしていて本人もそれを自覚しているため引っ込み思案なヒロインと、外面がよく優秀だがヒロインに対しては意地が悪い相手役の少年、という取り合わせは極めてオーソドックスな少女マンガスタイルである。他に親友であり味方陣営のリーダーという立ち位置の真響とも、微妙な三角関係の気配があったり終盤まで世界遺産の指名を争うライバルでもあったりと、一筋縄ではいかない緊張感のある関係が続く。地球の自然と交感する霊的な力を持つ、絶滅に瀕した能力者を選抜するために創立された特殊な学校という設定はこれまた王道のラノベだし、ラブコメだけでなく能力バトルものとしてもそれなりの見せ場があって、とにかくバランスがいい。

陰陽師山伏修験者)、忍者(!)といった各種の能力も、単なるキャラ毎の味つけという水準ではなく山岳信仰などのルーツをしっかり踏まえた正統の伝奇小説といえる内容である。そしてヒロインである和泉子が「姫神」を降ろす憑代として最強の能力というより器の大きさがケタ違い、という展開も自然。さらに、「姫神」は未来から人類滅亡の歴史を改変するために降臨しているのではないか? という説が開陳され、姫神の人格は将来の和泉子自身かもしれないとも示唆される。ここまでくると壮大な時間SFである。

とにかく間口が広く様々なジャンルを取り入れて無理がない、懐の深い小説。強いて言えばレッドデータガールというタイトルはどうかな? とやや疑問だが、些細なことだろう。

アニメ版はかなり駆け足で、原作全6巻のうち5巻までの内容を消化するというある意味で不可解な構成だったが、能力バトルとしての物語はそこで決着しているともいえるし内容的に最大のスペクタクルは間違いなく5巻なのでTVアニメとしては正解かもしれない。少なくとも映像美には見るべきものがある。