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shanghai / ラノベ部 RSSフィード

2013/09/22(Sun)

野崎まどファンタジスタドール イヴ』(ハヤカワ文庫JA野崎まど『ファンタジスタドール イヴ』(ハヤカワ文庫JA) - shanghai / ラノベ部 を含むブックマーク はてなブックマーク - 野崎まど『ファンタジスタドール イヴ』(ハヤカワ文庫JA) - shanghai / ラノベ部

ロングロウドは、米国の先端技術を集めてくれる。それに、武器だって作ってくれる」

「うん」

「タチバナは、美しい服を作ってくれる」

「うん」

「僕は、心を作ろう」

「うん」

「君は、体を作れ」

 私は、うん、と頷いた。

「人間を、作るんだな」

「いいや、違うよ、大兄君。そこだけは間違っちゃあいけない。いいかい、大兄君、僕達は人間を作るんじゃない。女を作るんだ」

企画としては紛れもなく、TVアニメファンタジスタドール』のノベライズ――正確には、メディアミックス企画としてアニメと同時進行――なのだが、SFプロパー以外の何物でもないハヤカワ文庫JAに収録されていることからもわかる通り、生粋のSF小説。著者野崎まどの近刊『know』は読んでみたが、それこそSF大賞を獲っても少しもおかしくない堂々たる本格ハードSFだった。そして本作もそれと全く同様の水準で書かれた、SF小説である。

TVアニメファンタジスタドール』は、カードから実体化する「ドール」と呼ばれる人造の(?)少女が戦う、という、設定は全く荒唐無稽な、子供向けアニメのフォーマットをベースに採用した、しかしどこか調子の狂った独特のコメディとでもいうべき作品だった。

そこでこの小説はというと、内容は前日譚とはいいながらアニメ本編とはほとんど関係ない、ドールシステムが開発される過程の話である。カードから実体化する少女、という技術が如何にして開発されたのか? と突き詰めて考えればなるほどこうなるであろう、実にフェティッシュで変態的な小説だった(笑。

文庫本の薄い体裁をみれば一目瞭然だが、本編は短い。せいぜい中編である。

前半は、幼少期の性的トラウマという、言ってしまえばそれなりにありがちな経験をもとに「自分は周囲の人間とは全く異質だ」と悩むエリート学生が、まるで明治教養小説のような筆致で書かれる。実際、夏目漱石の『こころ』を意識しているのではないかと思われる部分がある。深刻な女性嫌悪の反動で親友との関係がちょっと同性愛志向に見えなくもないところなどは、その筋にもオススメできる(笑。

エピローグ部で、女性視点から総括するような台詞で終わっているのも、優れたバランス感覚だと思った。

巻末にはドール計画の年譜も掲載。公式設定と考えていいのだろう。プロデューサーである谷口悟朗の巻末解説によると、企画全体で押さえるべき設定は共有した上で具体的な内容についても相談を重ねたようで、下駄を預けられた著者が小説は小説と好き勝手に書いたという感じではない。著者側のコメントも聞いてみたかった。

 

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